名古屋高等裁判所 昭和26年(う)631号 判決
(イ) 被告人に関する原審第一回公判調書(第六十八丁以下)における記載によれば原審における訴訟手続には所説のような刑事訴訟法第三百一条の法令違反の廉を認めることができる。しかしながら右公判調書における記載によれば原審は原審検察官の取調の請求のあつた被告人の司法警察員、検察事務官に対する各供述調書特にその自白を内容とするものについてはその余の取調の請求のなされた各証拠の取調をした後にその証拠の取調をなしその間刑事訴訟法第三百一条所定の所説のような法意にそうべく意を用いた跡を判然ととどめ之に加うるに被告人及び原審弁護人においても右原審検察官の右各証拠の一括取調請求に対して何等異議をとどめることなく却つてそれらを証拠とすることに同意している次第であつて原審における訴訟手続における右の法令違反が明らかに判決に影響を及ぼすべきものとは認められないので論旨は之を採用しない。
次に論旨第三点について案ずるに
(ロ) 原審検察官が所説のように被告人の前科調書を他の証拠書類と共に一括してその取調の請求をしたことは記録上明らかである。しかしながら前科の事実は累犯加重又は刑の量定に際つて被告人の利益のためにも不利益のためにも当然参酌しなければならない極めて重要な因子であつて所説のようにその取調が直接事件の審判に必要でないものとは到底解することはできなく、従つて所説の刑事訴訟規則第百九十三条第一項によつて検察官はまず、事件の審判に必要と認める証拠の一として右前科調書をその他のすべての証拠と共にその取調の請求をしなければならないので原審検察官の右前科調書の取調の請求には所説のような訴訟手続における法令違反の廉はなく従つて論旨は之を採用しない。